独学ができる人、できない人


 学ぶことの楽しさも、生きることの喜びも、現状の教育によって失われている部分がある。事実、僕はそれによって潰れかけた。それは、なんとかして変えていかなきゃいけないのではないだろうか。

 そのような考えを、はじめからはっきりと持っていたわけではない。でも、ぼんやりと考えているうちに、僕だからこそできることがあるのではないかと思うようになった。考えれば考えるほど、いろんな思いがこみ上げてきて、塾を立ち上げようと決めた。大学四年の末のことだ。

 ゼロからはじめる場合には何事であれ紆余曲折がつきものだけれど、試行錯誤を重ねた結果、六年目になった今年になってようやく、どんな指導をしていけばいいのかがクリアに見えるようになってきた。

 この本では、そのような過程を経て僕が考えるに至ったことを書いていくつもりだ。ただ、その前に、まずは僕が主宰する塾について知っておいてもらった方がいいだろう。

 僕が塾長を務める「道伴舎」は、自学自習を支援する塾だと言っている。独学を応援する塾だと言ってもいい。どのように指導をしているかというと、塾生からメールで一週間の学習報告を受けた上で、原則として週一回、スカイプを通じて一時間の対話をする。その際、勉強内容に踏み込むこともあるけれど、それ以上に、どのように勉強していくのかや、勉強の障害となっている悩みについて語り合うことの方が多い。

 それだけ?って言われそうだけれど、ざっくりいえば、それだけだ(細かく言えば他にもいろいろあるけれど)。でも、それだけで伸びる人はとんでもなく伸びる。だって、既に書いたように、独学は他の何よりも血となり肉となる学びのスタイルなのだから。もちろん、効率だって受動的に勉強するよりも、ずっと高い。

 ところで、道伴舎で伸びる人と伸びない人には、はっきりとした違いがある。それは、本人に「学びたい」という気持ちがあるかどうか、だ。

 僕のような人間が塾長であるということもあって、うちの塾には、いわゆる「優等生」タイプの塾生は少ない。どちらかというと周りから変わり者のように見られている塾生が多い。学校の勉強についていくことができないまま、僕のように高校を中退してしまった塾生も少なからずいる。要するに「落ちこぼれ」や「はぐれもの」のための塾なのだ。

 そのような状況の塾生に、僕らがどれだけ適切なカリキュラムを提示しても、効果的な勉強法を教えても、また、完璧な生活スタイルを組み立てたとしても、結局、本人に「学びたい」という気持ちがなければ続かないし、成果につながりにくい。

 だから、僕らが大切にしているのは「学びたい」という気持ちを塾生が抱けるような指導をすることだ。学ぶことで自分の人生を切り拓いていきたいという強い気持ちを抱くことさえできれば、それから先は、すこしヒントを提示するだけで、自分の力で成長し続けることができるからだ。