⑮「無意識」を使いこなす


 感情と行動のコントロールは「意識」によって行われる。この意識と表裏一体の存在として「無意識」があるが、ここではそれを使いこなす方法について語ってみよう。

 そもそも「思考」や「意識」というものを僕らがいかに使っていないか、ということをこれまで繰り返し述べてきたけれど、逆に言えば、僕らは膨大な「無意識」とともに生きているとも言える。

 無意識というのは、寝ているような「意識の無い時」だけを指すのではない。

 たとえば勉強に没頭している時は「意識」はあるけれども、自分が勉強しているという認識はない。はじめは「勉強に没頭しよう」と思ってしていたとしても、途中から自分が勉強していることすら忘れる。それが没頭ということであり、だから没頭を無意識的な行動と考えることもできる。

 もっと身近なところでは、歩くという日常的な動作ひとつとっても無意識的に行なっている。歩きながら物事を考えている時、僕らは自分が歩いていることを認識しないまま歩いている。学校の帰り道、考え事をしながら歩いていたら、ふと気がつくと家に着いていたという経験はあるだろう。それもまた、無意識が僕らに引き起こしている現象だ。

 僕らは人生のかなりの割合を「無意識」的に生きている。

 すなわち、僕らの中には自覚していない膨大な無意識の領野が存在しているのだ。その中には自分の望んでいない思考パターンや感情もあるだろう。それらを無意識という暗闇から、意識という光のもとに引きずり出すことによって、自分が望むものに変えていくことができる。

 たとえば悲しい気持ちで無意識を過ごしている人と、嬉しい気持ちで無意識を過ごしている人とでは、後者のほうが楽しく生きられるだろう。また、成功すると無意識的に信じている人と、どうせ自分は失敗すると無意識的に信じている人とでは、成功すると思っている人の方が踏ん張りがきく。

 なぜ自分は悲しい気持ちを抱いているのか。失敗すると思い込んでいるのか。勉強から逃げたいと思っているのか。孤独を強く感じているのか。そのような「無意識」に光をあてることで、ネガティブな思い込みを変え、ポジティブな気持ちを抱くことができる。

 こうした自分の内面を探っていく方法と、もうひとつ、自分の外側の世界が内側の無意識に与える影響を利用する方法もある。

 受験でいえば、志望校の写真や赤本を机の前に置いておくのもそのひとつ。志望校に受かりたいという気持ちを無意識に刷り込み、モチベーションが高まる。

 ただ、それが必ずしもポジティブな影響を与えるとは限らない。志望校の写真が「もう無理かもしれない」というプレッシャーを無意識に与えているとすれば、ひとまずそれを机の引き出しにしまい、状況を冷静に考え直すべき時期なのかもしれない。こうしたことも含めて、外側の世界はいつも自分の無意識へと働きかけている。

 「無意識」を垂れ流して暮らしていると、その時々の感情に流され、たいていの場合、ネガティブな感情に囚われて生きることになる。でも、僕らの無意識が、過去に起こったあらゆる出来事と、現在の身の回りで起こっている出来事から成り立っていると理解できれば、それを乗り越えることはできる。

 僕らは意識に上る以前の「無意識」的な自分の思考パターンや感情に光をあて、「意識」によって作り変えることができる。それによって、僕らはネガティブな感情に引きずられて生きるのを避け、ポジティブな感情を抱き、能動的に生きられるようになるのだ。