⑯良い習慣をつくる


 無意識が自分に対してどのような声掛けをしているかを見れば、無意識における思考の習慣が分かる。

 たとえば、僕は今でも何かいいことがあるたびに自分に「天才」と言い聞かせている。そう言おうと思っていなくても、自然とそう言ってしまうようになっている。

 これは自分の無意識を、無意識的に良くしようとしている行動だ。僕が天才であるはずはないのだけれど、なにかあるたびに「俺ってダメな奴だ」と思うよりも、ずっとモチベーションが上がるし、自信も生まれるし、楽しく時間を過ごせる。

 僕が「天才」と自分に言い聞かせることは習慣になっていて、今では無意識的に行なっていることだ。でも、習慣になっていないけれどやりたいことは、はじめは意識的に行うしかない。意識的な行動を繰り返すうちに、それに慣れてきて自然な行いの一部となり、やがて無意識的な回路が生まれることで、はじめて自分の「習慣」となる。

 その意味で、習慣というのは、意識しないとできなかったものが、慣れることによって無意識的にできるようになったものだと言えるだろう。

 「歯磨き」は、そうした習慣の見本といえる。小さい頃はできなかったし、それをする意味もよく分からなかったけれど、僕らは歯磨きという割と複雑な動作を、ほとんど無意識に行うことができる。それは毎日の習慣になってもいるから、自然と口臭は抑えられるし、虫歯になって歯を失う可能性も減る。普段からそんなことを考えてはいないけれど、僕らは良い習慣を持つことによってずいぶんと生きやすくなっているのだ。

 この「歯磨き」のような良い習慣を、意識的にたくさん作っていくことができれば、自分にとって望ましい行動を無意識的に選択できるようになる。考えること、週報告をすること、何かを読んだり学んだりしようとすること。それらが習慣になってしまえば、たいして苦労せずとも、よい結果を自然と得られるようになる。同時に、そうした習慣を元に、新たな別の良い習慣を作ることができるようにもなる。

 勉強する上で大切な習慣は「生活の習慣」だ。生活の習慣を作るためには、まず24時間をどのように過ごすかの「時間割」を決めなければならない。たとえば「図書館に行く」という行動を入れて、それが習慣化されてしまえば、考えることも、面倒くささを感じることもなく図書館に行って勉強できるようになる。

 たとえば一日十二時間の勉強をするということは、それを経験したことのない人には大変なことのように思えるだろう。でも、それを実行している当人は、実はさほどの負担を感じていないことも多い。

 決めた時間に学習場所に行くという習慣と、九十分の集中を八回繰り返すという習慣が身についていれば、それは実に自然と達成される。勉強している間は没頭しているわけだから、それで苦痛を感じることもない。

 このように生活の習慣が作り上げられ、継続的に学習する環境を整えてしまえば、アクシデントに対応するだけで、苦労することなく自然と学習時間は積み重なっていく。

 習慣の中でも最も大切なのは、良い習慣をつくることを習慣化してしまうことだ。いつでも無意識的に良い習慣を作ろうとしていれば、自然と生活の習慣は改善されていく。

 僕自身、そのようなスタイルを築こうと努めてきた。だからこそ、ここに書いてきたようなハウツーが生まれもした。その結果、僕自身はハウツーにほとんど悩まなくなった。

 ある程度までハウツーを学び、それが自然と改善されていく状態が築かれれば、いちいちハウツーを気に病むことはなくなり、それ以外のことに時間を振り分けられる。

 ハウツーを若い時に身につけておくのは悪くない。でも、ハウツー(How to)という言葉通り、それはあくまで生きる上での手段にすぎない。大切なのは、手段ばかりに目を向けるのではなく、生きる上での目的そのものから目を逸らさないことだと僕は思う。