⑨「勉罪病」を克服する



 どういうわけか、受験生はそろいもそろって「勉強しなければならない」という意識を抱いている。二十四時間勉強し続けることなんて不可能なのに、すこしでも遊んでいる時間があると、自分はサボっていると考えて罪悪感に苦しめられる。

 まるで勉強しないと罪を犯しているかのように感じている受験生は、キリスト教で言うところの「原罪」を背負っている人にも似た苦しみを味わっている。

 受験生は共通して「勉罪」を背負わされていて、それが重症化すると、ある病気が発症する。「勉強しないと罪悪感に駆られる病」、すなわち「勉罪病」だ。

 もちろん、そんな病名は医学の中に存在しない。僕が勝手に考えたこの病名は、でも、受験生の多くが罹患していて、受験勉強から喜びを奪い取ると同時に、「早く受験から解放されたい」という気持ちの根源をなしている。

 「勉強しなければならない」という社会や周囲の環境が作り出しているプレッシャーはかなり強くて、心の中に内面化してしまってもいるので、追い込まれた受験生が打ち消すことは難しい。

 でも「自分は勉罪病の患者なのだ」と苦しさの原因を理解するだけでも、だいぶ苦しみは和らぐはずだ。「勉強しなきゃ」という焦りを感じたら「おお、いま勉罪病が発症してる」と笑い飛ばせるくらいになれば、受験生としてはたいしたものだ。

 勉罪病を克服するためには、もうひとつの方法がある。

 先に述べた「今日の目標を達成したのだから後は休んでもいいし、勉強したければしてもいい」という状況を作り出すことだ。

 多くの受験生は、何時間やっても「もっとやらなきゃ」と思っている。それは現在地とゴールとの距離がつかめていないから生まれる誤った考え方だ。24時間ずっと勉強するなんて誰にもできない。

 「もっとやらなきゃ」というのは勉罪病が発症している証拠だ。そうした考え方を抱いていると、どれだけ努力をしても達成感を得られず、やる気を失っていくばかりだ。

 だから、きちんとプランを立て、自分の力を理解して、それを元にした日々の「目標」を立て、それをクリアすることが大切だ。

 目標をクリアした後は、休むのか、さらに勉強するのか、自分のその時の気持ちで決められるようにしておくだけで、気分は全然違ってくる。勉罪病に苦しめられることなく、勉強に充実感を抱き、つかの間の休憩を楽しむことができるようにもなるだろう。