方法論について語る前に


 本章では、学欲を抱いてはじめの一歩を踏み出した後、千里の道を歩いていこうとする人へ、僕が千里を歩いてくる中で大切にしてきたことをハウツー形式で書いてみたい。

 ハウツーと言っても「千里の道向け」だから、明日からすぐ使えるものばかりではない。その多くは実践を繰り返して身につける技術、すなわち「スキル」であり、修得までには多かれ少なかれ時間がかかる。

 その代わり「スキル」は修練を重ねれば必ず、誰でも使いこなせるようになる。そうやって身につけたものが、千里の道中のお供として役立つことは僕の経験から保証する。

 その内容に入る前に、こうしたスキル習得の指導を仕事の一部にしてきた僕が、そもそもハウツーをどのように扱うべきだと考えているか、について触れておきたい。

 ところで、僕はこの原稿を、市民プールの隣にある大きな公民館のような場所で書いている。ここは日中はたくさんのお年寄りが集まっていて、夜になると高校生が勉強しに来るのだけれど、その高校生たちの勉強のサボリっぷりがすごい。

 勉強しようと思って来ているはずなのに、ケータイをいじってたり、友達と話してたり、眠ってたり……。で、たいして勉強が進むこともないまま適当に切り上げて帰ってしまう。たぶん勉強のやり方もひどいんだろうなぁと想像してしまって、そんなんじゃ成績上がらないぜ、と思わず声をかけたくなる。

 でも、思えば僕だって同じように机に向かっていた。図書館で勉強しようとしては、ほとんど何もしないまま帰るという経験を何度したことだろう。そして、それは自分で勉強したいという気持ちを持っていなかったことに原因があった。

 これから書く内容は、主体的に学ぶ経験を重ねた人は自然と身につけていることだ。逆に言えば、うまく学べてないなという人は、知っていても実践できていない。

 そんなに特別なことではないから、読んで理解することはぜんぜん難しくないと思う。なんとなく知ってたよ、ということも多いと思う。でも、だからこそ自分にこう問いかけながら読み進めてほしい。「自分はこれを実践していたか?」と。

 学ぶための方法についてたくさん文章を書いてきたし、人に教えもしてきたけれど、そうした「方法論」を読んだり聞いたりした人が、それをきちんと実践するケースはとても少ないと感じてきた。僕の実感値で言えば、一割か、せいぜい二割くらいだ。だから変われないんだよ、と直接言うこともあるけれど、実践しない人はいつまでも実践しない。

 でも、実践しなければスキルは身につかない。だから、くどいようだけれど言っておきたい。「なるほど」で終わりにしないこと。それを実践できているかどうか自分に問いかけて、できていなければ、どうやって実践しようかと考え、行動に移すこと。

 安易な解決策なんてないし、読んだだけで身につくなんてこともない。

 本当に自分を変えるためには、考え、行動することを止めちゃいけない。それは、人間が人間として生きる上で、もっとも大切なことだと僕は思う。それができれば、必ず変わっていくことができるのだから。