問題を切り出し、解決する


 世界中に問題があるけれども、そのすべてが見つけられているわけではない。たとえば僕が「学欲」という言葉で表現しなければ、この問題がこのような形で明確に取り出されることはなかった。

 問題を問題として人々が認識するためには、世界からそれを問題として切りださなければならない。実は、いちばん難しいのは問題に答えることではなくて、問題を切り出すことなのだと僕は思う。

 僕が「学欲」という問題を切り出した時のことを考えてみてほしい。こうやって文字にしてしまえば、ずいぶん簡単でシンプルな言葉だけれども、これまで述べてきたようなことを考え、つなぎあわせて、学欲というひとつのコンセプトに結実させるまでには膨大な学びと、そのための時間を要した。

 でも、そうやって問題を切り出すために学び続けることは、充実した日々だった。と同時に、そうやって切り出した問題を解決するために学び、挑戦し続けていく未来を楽しみにも感じている。実際、この本を書いているのだって、そうした行いのひとつだ。

 大切な問題であればあるほど、多くのことを学ばなければ切り出すことができないし、たとえ切り出せても、その解決には長い時間がかかる。でも、問題が難しければ難しいほど、その分だけ挑戦しがいもあるし、それを解いた時の喜びも大きい。

 このような、問題を切り出し、解決したいという欲求。それこそが学欲だと僕は思っている。学欲を取り戻すことによって、僕らは多くのことを主体的に学び続けていくだろう。それを通じて、世界にはまだまだ問題が山積しているということに気づく。

 でも、衣食住を心配することなく、世界中にある問題を解決することができる時代なんて、これまで一度としてなかった。僕らは、自分で自分の解きたい問題を求めて、世界からそれを切り出し、そして解決することができる。それは、かつて人類が経験したことのない自由で、可能性に満ち溢れた時代だと、僕は思う。

 衣食住という人類がずっと悩まされ続けてきた問題に挑戦し、ほとんど解決してくれた営みを引き継ぐとすれば、それは新たな問題を見つけ、解決するという生き方ではないだろうか。